最近気に入って通っている、鍼灸院の先生がいます。何が気に入っているって、やっぱ副交感神経だよね、やっぱ丹田だよね、というのが、心地良く会話できるところです。

声楽を始めて、さらに痛感している「緊張」。ステージに立つときに緊張するとかの、ざっくりした粗い話じゃなくて。自分ではリラックスしていると思っていても、体が勝手に緊張している話です。

人間て、繊細も繊細。体じゅうセンサーだから、無自覚に、常に何かを受け取って感じている。ちょっとした温度変化や、相手の表情なんかにも敏感に反応している。緊張しているかどうかを自覚できるかどうかは、その反応を頭が認知しているかどうかだけの話なのです。

ロダンの考える人状態

わたしは、考えることが大好きです。知的好奇心を刺激するのが最も満たされるタイプで、ひとたび何かに着目したら、すぐに調べたくなるし、それに対して自分がどう感じるかを面白がります。

いろんな考えが高速回転で流れていくので、言語化が間に合わなくて、さあタイヘン。乗りに乗ったときは、平気で6、7時間、水も飲まずに過集中状態に。頭の中でイマジネーションをふくらませるのが楽しいのだから仕方がないのだけど、それがすぎると、体がお留守になります。

鍼灸院の先生、いわく。

「まさに、ロダンの考える人状態ですね。あの格好、ずっとしてたら体はやってられないですよ。思考や意識はだいじだけど、それを支えているのは体。思考と体、両方だいじ。いわば、思考は人間、体は動物。頭も腹も、両方だいじ」

たしかに。わたしが頭の中で宇宙旅行をしているとき、わたしの体は、ロダンになっている。ああ、声楽の先生も同じことを言ってた。ロダンになっているときは体がお留守になっているので、声も自由を失うのです。あちゃー(汗)

お灸が12%熱い人

先生自身は、感じることしかできなくて、考えることができないタイプなのだそうです。武道の先生に「お前ほど考えることができない弟子は見たことがない」と呆れられたほどだとか。先生は毎朝、「今日一日考えよう」と言いながら水浴びをしているそう。そう言わないと、一日中、全く何も考えないのだそうです。

そんな先生は、上から三番目のお灸が前回より12%熱いとか、20%熱いとかの、微細な違いがわかるくらい感じる力が鋭い。ロダンなんて、お灸が熱いかどうかも感じられなくて、反応しない・・・。

わたしも、感じる力はもともと高い方です。呼吸に集中して「あ、膨らんだ、あ、しぼんだ」とか、足の裏に集中して「あ、じわっとした、あ、あたたかい」とかって感じるのは、大得意。

でも、そこに好奇心が、むくむくと顔を出すのです。

わ!いまここを動かしたら、急にリラックスして呼吸が深くなった!人間て面白い!この現象って、どういう仕組みで起こっているんだろう?人間て、誰がつくったの?すごくなーい?!

調べてもわからないところが、これまた面白くて。やっぱり人類って、まだまだわかんないことばっかりなんだ!めちゃくちゃ面白くなーい?!と、わからないことまで面白がってしまう。

野生時間

わたしの話を半ば呆れながら聞いていた先生は、こう言いました。

「面白がることも、気持ち良がることもしなくて、ただただ感じるだけ。それが野生です。『野生時間』を取ってみてください」

うん、そうだ。ただただ、感じるだけだ。

そんなわけで、その日から、寝る前に野生時間をつくることにしました。

考える悦びは、手放さないまま。一日の終わりの数分だけ、ただ感じる野生に、体を明け渡してみる。知性と野生は、主役を譲り合えるのかもしれません。