はじめまして。河野若菜といいます。まわりからは、わかちゃんと呼ばれています。

総合商社で20年、数千億円の海外プロジェクトの現場にいました。アルジェリアに駐在し、40カ国を旅して、管理職まで勤めて、「もうお腹いっぱい」とにこやかに会社を卒業。いまは50歳から始めたオペラの探究に夢中です。

こう書くと立派な人みたいですが、実態は、ただの面白がり屋です。天体望遠鏡を買おうと調べていたら、いつのまにかバビロニアの星読みと徳川家康の治水を経由して、人間の可能性の話に着地しているような頭の持ち主です。友人には「思考回路が謎すぎる」と笑われています。

ここには、そんなわたしの実体験から生まれた「20の問い」を並べています。

なぜ、答えではなく問いなのか

答えなら、もう世の中に十分あります。検索すれば出てくるし、AIは一番いい答えを出すのがどんどん上手になっています。

でも、旅の途中で何度も思い知らされたのです。メニューに載っている料理が「ありません」と言われる食堂で。数千億円の交渉が一晩でひっくり返る会議室で。答えを持っていることより、観る位置(アングル)を動かせることのほうが、ずっと頼りになるのだと。

だからこのコラムたちは、何も教えません。わたしが五感でキャッチした違和感と感動を、生のまま置いてあるだけです。読み終わったとき、手元に残るのが答えではなく「問いの余白」だったら、それがいちばん嬉しいのです。

3つの棚に分けてあります

■ 棚のいち:予定調和の外を、面白がる

計画が崩れた日ほど、世界は面白い顔を見せてくれました。

■ 棚のに:頭と身体の、二刀流

商社で磨いた論理は、わたしの大切な財産です。その財産を、50歳から始めた声楽が教えてくれた身体の感覚と「和える」と、世界の解像度が変わりました。

■ 棚のさん:同じにならないまま、響き合う

木だけでは、森になりません。異なるままの人と人が、網の目のように呼応する瞬間を集めました。

わたしの大好物の話をさせてください

どの棚から読んでもらってもいいのですが、ひとつだけ、自己紹介の代わりに白状しておきたいことがあります。

わたしの大好物は、道を極めた人の目が、輝き出す瞬間です。

天体望遠鏡を買いに行った家電量販店で、伝説の販売員さんに素朴な疑問を投げたら、閑散とした売り場でめくるめく宇宙話が止まらなくなったこと。時計の博物館で、キュレーターさんの解説を遮って「南半球で発明されてたら時計は左回りだったってこと?」と口走ったら、そこから話が何倍も面白くなったこと。国立科学博物館で、ただの石ころにしか見えないものを「三葉虫の足の一部です」と嬉しそうに解説してくれる研究者の顔。

専門家が長年磨いてきた知の奥から、本人も久しく取り出していなかった宝物が、素朴な疑問ひとつでころんと転がり出てくる。あの瞬間に立ち会えることが、嬉しくて仕方がないのです。

だからこの場所は、わたしが何かを教える場所ではありません。どちらかというと、問いを置いて、誰かの中の宝物が転がり出てくるのを、ワクワクしながら待っている場所です。

旅人へ

社会的な適応はもう十分にやりきって、舗装された道路の上で、静かな行き詰まりを感じている——そんな旅人が、ふらりと立ち寄って、どれかひとつの問いを持ち帰ってくれたら。

そして、問いの続きを頭ではなく身体で試したくなったら、月にいちど、少人数で「観(みかた)」を動かす3時間をひらいています(解像度リトリート)。道を極めた人をお招きして、その人の観を一緒にのぞく対談の場も、これから増やしていくつもりです。

答えのない話ばかり20個。
ようこそ、&Wonderへ。