アルジェリアのコンスタンチンで、日焼けで真っ黒な顔をした男性たちが5、6人たむろして、ちっちゃなエスプレッソカップ片手に、日がな一日だべっている風景を、よく目にしました。
立派なモスクと、生々しい市場や露店が集まる町の一角や、舗装されていない道と牧草地帯の脇の掘っ立て小屋に、どこから調達してきたのか、年季の入ったテーブルと椅子のセットが置いてあって、そこで、ぷかぷかタバコを吸いながら、だべっているのです。
アルジェリアをよく知る、仲良しの通訳さんに「みんな何してるの?」と聞いたら、「朝から晩まで、どうでもいいことをずーっとダベッてるんだよ。話題が一周したら、同じ話題をまた繰り返すのさ」と教えてくれました。
それの何が面白いんだろうと思ってしまったので、「ふうん、そうなんだ、なんで?」と口を突いて出てしまったわたしに、通訳さんはひと言。
「暇つぶしだよ」
エスプレッソおじさんたちのルーティーン
そんなエスプレッソおじさんたち(親しみを込めて「おじさん」と呼ばせていただきます)は、朝自宅を出て、カフェで日がな一日おしゃべりし、夕方帰宅するのがルーティーンなのだそうです。サボっている罪悪感もなさそうだし、とびきり盛り上がる話題がなくても構わないみたいで、とにかくずっと喋っていて、のんび〜り、ゆった〜り、時が流れている。
人懐こい国民性に加え、たっぷり時間のあるエスプレッソおじさんたち。迷える旅人は恰好のネタと見えて、ひとたび道を尋ねようものなら、寄ってたかって教えてくれようとします。しかも全員自信たっぷりに「あっちだ!」とドヤ顔で、全く違う方角を、バラバラに指さして教えてくれるのです。
いや、そっちじゃないよ、こっちだろう!
ちゃうちゃう、こっちの方が近道なんだって!
外国人にはこっちの方が分かり易いって!
そしてそこでまた、おじさんたちの延々の議論(?)が繰り広げられるのでした。
そもそも標識や目印になる建物なんてほとんどないし、やっと見つけた紙の地図は超ざっくりだったりするので、頼れるのは、自信たっぷりの人懐こい親切なエスプレッソおじさんたちだけだったのです。
本当に幸せなんだっけ?
こういう光景に出くわすと、合理化・効率化が正義と言わんばかりに、時間に追われてアクセク生きている自分て、本当に幸せなんだっけ?なーんて、思ってしまうこともありました(笑)
効率のものさしで測れば、あれほど「無駄」な時間はありません。でも——
あの乾いた大地の掘っ立て小屋には、時間が、豊かに流れていた。
時間を使いこなすことと、流れる時間のなかに、ただ居られること。どちらが贅沢なのでしょうか。