赤ワイン半分の勢いで始まった声楽レッスン。最初の課題曲は、「カロ・ミオ・ベン」という、イタリアの古典歌曲でした。

わー、いまって、アプリで楽譜ダウンロードして、iPadで見ながら注記書き込んだりできるんだーーーー。すぅごぉ〜い。

一応、4歳から12年ほどピアノを習っていたので、楽譜はよめます。でもでもでもでもっ、いっぱい忘れているわけで。手っ取り早くYouTubeで、どんな歌かを調べることにしました。さすが有名な曲だけあって、たくさんの人が動画をアップしています。

出だしは、P(ピアノ)

いよいよ、レッスンで歌ってみる日。いきなり、難関が!

この曲の歌い出しは、P(強弱記号のピアノのこと)。

幼少期に習っていた、おっかないピアノの先生は、「P(ピアノ)は静かに弱く弾きなさいっ!」って怒ってたよな。P(ピアノ)って、弱く歌えばいいんだっけか・・・?

ん?

だけど、わたしが最も好きな歌い方をしているモンセラート・カバリエさんの「カロ・ミオ・ベン」の出だしのP(ピアノ)は、弱々しいのとは全然違って、とても芯のある静けさで。いったい何がどうなったら、あの音(声)が出るのだろう?と思うような音(声)でした。

Tさんにそのことを話したら、こう教えてくれたのです。

「そう、P(ピアノ)っていうのは、弱々しく歌えという意味ではないんです。自分の心の中にある熱量を、すべて凝縮して圧縮した状態。その熱量をほそーくすることで、あのP(ピアノ)が生まれてくるっていうイメージをもって歌ってください」




へ?
こ、心の中にある熱量を凝縮して圧縮・・・・・?????

静けさの正体

Tさんは、続けます。

「静けさを感じるときって——例えば、自然の静けさを感じるとき、自然の中のエネルギーって、すごい膨大じゃないですか。あの膨大なエネルギーが、うわーって凝縮した状態で、『わー静か』って感じられると思うんです。その対比の先にあるものは、ものすごい膨大なエネルギーなわけですよね」

途端に、わたしの目の前に、深く大きな森が広がりました。生きとし生けるものすべてのいのちが、地球や宇宙の恩恵を受けながら、大自然の摂理で存在している様子が浮かび、自分もその一部を成すような小さな点となって、膨大なエネルギーに生かされていることを感じます。

頭や言葉では、わかったつもり。だけど、気持ちを圧縮する作業って、いままでの人生で、意識したことなかったかも・・・。

人間楽器からその音を出す方法は、すぐには腑に落ちません。ひとまず、心と身体が仲良くなくちゃその音は出てこない、ってことまでは、きっとわかった・・・。

うぉーーーーっ!!!
腑の底から、細胞レベルでわかりたいっ!!!

静かな佇まいに宿るもの

弱音とは、力を抜くことではなく、内側の熱を限界まで凝縮して、響かせること。静かな佇まいの人が放つ、あの不思議な存在感の正体も、きっとこれなのだと思います。

声を張らずに届くものは、外の手数ではなく、内の密度で決まる。