「mieちゃんっっっ、たいへん!たいへん!たいへん!!!!
Tさんが喜んでレッスンしますよって、お返事くれたーーーー!!!!!」

普段、ほぼ何ごとにも動じないわたしが、仲良しのmieちゃんに朝からLINEで大騒ぎしたのは、2021年5月のことでした。

はじまりは、mieちゃんとの、ある日の会話です。

人間って、丸ごと楽器じゃん?

「わたしさ、実は歌を習いたいの」

打ち明けたわたしに、mieちゃんは少し驚いた様子でした。絵に興味があるのは聞いてたけど、お歌も興味あるの?と。

そうなのです。実は以前、ボイトレに通ってみたのだけど、しっくりこなくて、すぐやめてしまいました。歌って言っても、人前で歌いたいとか、歌手になりたいとかって言うより——人間って、丸ごと楽器じゃん?で、どうしたら、出したい音量や音質が出るかを、機能解剖学みたいなレベルで知りたいのです。骨盤底筋が弱いと腹圧かけられないのかな?とか、横隔膜ぺこぺこするのってどうやるのかな?とか。

機能解剖学って——いえ、全然詳しくないんですよ、はい。
ただ、どーも、何でもかんでも「しくみ」を知りたくなるみたいで。音って、どういう「しくみ」で人間の体から鳴っているんだろう?なんで歌手はあんなに自由自在に声を操れるんだろう!?に、フォーカスしちゃうのです。

mieちゃんの答えは、こうでした。

「そういうこと習いたいなら、オペラ歌手みたく、声楽をみっちり勉強した人じゃないと教えてもらえないかもしれないよ」

オ、オペラ歌手・・・そかー、オペラ歌手かー。
オペラ歌手の知り合いなんていないしなー。
いままで一度も歌のレッスンなんて受けたことないしなー。
いまから声楽ったって、道のり遠そうで辛そうで大変そうよねー。

できない理由の天才

そう、人間の脳は、こういうとき、天才的に「できない理由」を次から次へと創り出しては、言い訳して納得させて、先送りしようとするのです(笑)

もともとわたしは、石橋を叩いて叩いて、結局渡らないほどの超慎重派。熟考に熟考を重ねないと、決められないタイプです。

その日の晩のこと。LINEでしつこく歌のことを言うわたしに、mieちゃんが「じゃ、声楽習う?どんな人に習いたいの?」と続けます。

せっかく習うなら、一流で、尊敬できる音が出せる人に習いたい。たとえば——世界的に活躍している、ドイツ在住のTさんだったらいいのにな〜。

すると、mieちゃんは、こともなげに言ったのです。

「じゃ、その人にお願いしちゃう?」

えーっ?マジで!?いやいやいやいや!!!!!ないないないない!!!!!
そもそもTさんがレッスンを受付けてるかわかんないしさ、だいたい、ド素人のレッスンなんて見てもらえるとはとても思えないよー。



あ!でもちょっと待ってよ?
わたし、Messengerでつながってるんだった・・・。

ええーいっ、ダメ元でメッセージ送っちゃえー。ダメで元々、失うものなんてないんだから!なんだコイツ?って思われても、ただ恥をかくだけじゃないかーい!

赤ワイン半分の勢いで、やけに潔くメッセージを出してしまい・・・

翌朝!!!!

キャ―――――ギャーーーーー

冒頭の大騒ぎと相成りました。

ガードが緩んだ晩に

考えてみれば、「歌を習いたい」という気持ちは、ずっと身体の奥に居たのだと思います。それが、考える力を少し緩めた隙間から、ひょいと顔を出した。

熟考は、わたしの大切な財産です。
でも、たまにガードが緩む晩があるのも、悪くないのかもしれません。